あそこにカーティス様のお父様やお母さまが住んでいるのかしら。けれどお二人はもう一昨年隠居を始め、穏やかに過ごしていると聞いたような……。お姉さまが「あちらのお母さまやお父様たちと暮らさないのだから、ましではあるわね」と言っていたし……。
シルウィンは違和感を抱えながら歩いていき、長い時間をかけて屋敷の前にたどり着いた。すると大きな扉の左右を守るように立っていた衛兵が、シルウィンを見てうんざりとした顔をする。それを見てシルウィンは疑問を感じながら「ごきげんよう」と声をかけた。
「シルウィン様でいらっしゃいますね」
「ええ。そうよ」
「お入りください」
簡素すぎるやり取りだと、シルウィンは思う。まるでこれじゃあ歓迎されていないみたいではないか。でも、私は婚約者であり未来の妻。なんの連絡もなしに訪れた部外者ならこの態度は分かるけれど、もしかして花嫁修業に関わっているのかしら。王命の婚約者に対する態度にしては明らかにおかしい。何か試されている……? シルウィンは気を引き締めて屋敷の中へと入っていく。



