「置いていくなんて酷いじゃない。何も聞かず突っ走るなんて愚の骨頂よ。反省なさい」
「はは、ごめんシルウィン」
大公の口調は、普段のアウラのようなものだった。声も同じである以上、そこから判断することは難しい。シルウィンは布に被せられた人物に気が付くと、その元へと近づき、その布へと手を伸ばす。しかしそれを制止するように、アウラが左手で制し、布に向かってナイフを突きつけた。
「そいつが吸血鬼である夫人だよ。俺は大公に扮して捕まえたんだけど、彼女の目を見てはいけない、彼女はその目に特殊な能力を持っているんだ」
「へぇ、どんな」
「その目を見ると、思考を乗っ取られ、操作されてしまうんだ。だから気を付けてシルウィン」
「なるほど、それはいけないわね」
シルウィンは、布をめくろうとしていた手を引っ込める。そしてアウラの元へと振り返ると同時にその肩へ鋏を突き刺した。瞬時に、アウラの姿に変わっていたはずの大公の変身が解ける。そしてシルウィンは布を取り去り、本物のアウラの口枷を素早くとった。



