【完結】嘘つき騎士様と嫌われシンデレラ


 それだけで、アウラは己の中で変わったそれを、決定的に理解した。理解した結果、シルウィンの眠る間に全て終わらせることを決意するに至ったのだ。

 アウラが屋根と屋根を超えていくと、徐々にマルヴァータの屋敷が見えてきた。時間は夜も深まっていることで部屋の灯りはすべて消えている。その屋敷の間取りは、すでにアウラの頭の中に入っていた。夫人の寝室は、西側の三階。角の部屋。アウラは手慣れた動作でマルヴァータの部屋の屋根に飛び乗ると、そのまま壁を伝って夫人の寝室のバルコニーへと降り立った。そして物音を立てぬよう窓を開き、室内へと入っていく。

 夜の暗がりに照らされる、夫人の部屋。絨毯は血だまりのような深紅で、天井には花々が描かれている。家具の一つ一つにはこだわりが見られた。

 ――俺の家族を、殺しておいて。

 ふつふつと、アウラの腹の中が煮えていく。怒りに身を任せていたら、真実を見通す目も濁ってしまう。冷静に任務が行えなくなる。いつだってアウラは感情を殺してきた。シルウィンがその感情を露わにするたびに、初めは馬鹿にしていたくらいだった。しかし今、シルウィンを笑えないほどにアウラには明確な怒りと、そして憎悪が宿っていた。