【完結】嘘つき騎士様と嫌われシンデレラ


 その色の鮮やかさにシルウィンは瞬く間に目を奪われていく。そしてここが、自分と想像のカーティスの家になるのだとうっとりと眺めていると、徐々に速度を落としていた馬車が、門に入ったところですぐに停止した。

(まだ、屋敷の前にはついていないのに)

 門から屋敷までは、まだまだ馬車で向かうべき距離が広がっている。シルウィンが不思議に思っていると、御者が扉を開き淡々としながら「お降りくださいませ」と発した。

「え、だってまた着いていないわ?」
「旦那様から、ここでシルウィン様を降ろすよう伝えられておりますので」
「え……?」

 荷物などは、何もかもいらない。ディルセオン家について全て享受して、そして学んでほしい。だから何も持ってこないようシルウィンは伝えられているために、荷物はない。よって物理的に不可能ではない。けれど何かおかしい。