「だから? 結局職務上の役割をこなす人間なんて、いくらでも出てくるわ。時間がたてば、また別の大公が立てられて、今まで大公がしていたことを引き継いでいくのよ、代わりになれないのは家族恋人友人……、価値観の上に成り立つものだけだわ」
「……君がそういう考えだということを、俺は忘れていたかもしれない」
しみじみと受け止めるように頷くアウラを見て、シルウィンは眉間にしわを寄せる。何となくそれ以上のことを追求せずに、手持無沙汰気味に机に手を置き、指を遊ばせた。
まだ食事や湯あみの時間まで空きがある。それまですることもない。ここ最近、シルウィンはレース編みに忙しかった。
目的が娘に質問をすることと言っても、シルウィンは己の作り出すものに妥協ができない。よってシルウィンは夫人に似合うチョーカーを編むことに心血を注いでいた。
その甲斐あってか、今日シルウィンのチョーカーを渡された夫人の反応はとても良く、その場にいた家令もその出来を見て惚れ惚れとしていた。



