しかし今、あたかも緊張でどう話していいか分からない小娘をシルウィンが演じたのは、他ならぬシルウィンが考え出した作戦によるものだ。
「その、実はマルヴァータ夫人に贈り物を持ってきたのですけれど……少しそちらの侍女の方の手がお借りしたく……」
「かしこまりました。では」
執事はすぐに侍女を手配しようとする。しかしシルウィンはそれに「お待ちを」と制止した。
「実は、その、ある程度私と背格好の似た方が必要で……以前、クロスの準備をしていた方がいいのです」
「……はい。すぐにお呼びいたします。ここでお待ちを」
執事はシルウィンに礼をすると、そのまま彼女に背を向け侍女を呼びに向かった。
(やっぱり、侍女が大公の娘ということは、使用人にも一部の人間しか知らないようね。私を案内した使用人が家令などではなくてよかったわ)



