「確かに、大公に似た侍女を見たわ。……ああ。そういうこと。もし大公が吸血鬼であったのなら、その娘は吸血鬼。娘が吸血鬼でないのなら、夫人が吸血鬼。そうなるのね」
「ああ、だから君には、侍女である娘に問いかけをしてほしい」
「吸血鬼であるかを?」
「問いかけは何でもいい。血は美味しく感じるかでも……むしろ直接的な表現よりも、曖昧な、詩的な表現のほうがいいかもしれない。娘が吸血鬼でなかったとき、言ってしまえば君は頭のおかしな令嬢だと思われてしまうだろうから」
「確かにそうかもしれないわね。美しすぎて人と違った感性を持ってしまった令嬢というのも悲劇的で御芝居の世界のようだけれど、私に悲劇はふさわしくないわ。そして、後はどう行動をするか……」
頬に手をあてたシルウィンは、その娘とどう接触しようか想いを馳せる。大公に似た侍女は庭園でクロスを持ってくるまではその姿を現すことはなかった。ということは夫人付ではないということ。となると、接触するならば呼び出しをするか、こちらから行かなければいけない。
本来使用人の管理は家令が行うもので、その家令を管理するのが大公や夫人。屋敷と関係のないものが直接的に使用人と関わることができる機会は殆どない。シルウィンはしばらく考え込むと、そして軽い音を立ててその両手を合わせた。
「そうよ! 私が贈り物をすればいいのよ!」
「……は?」
「そうと決まれば、明日早速マルヴァータ夫人に、屋敷に行きたい旨を伝えるお手紙を送らなくてはいけないわね!」
シルウィンの言葉に、アウラは自分の耳を疑った。贈り物をすることと、侍女に質問を投げかけること。その二つに一体どんな関連があるのか。疑念を隠さないアウラにシルウィンはただただ「見てなさいよ!」と得意気に笑っていた。



