【完結】嘘つき騎士様と嫌われシンデレラ


「それであなたの作戦は?」
「大公の娘を攻めようと思う」

 アウラの言葉に、シルウィンは驚いた。マルヴァータは、血縁者が遠縁の者でもその挙動が注目されるほどにその名の大きい家だ。だからこそ大公と夫人の間に子供が存在しないことは知れ渡っており、その原因は夫人によるもので、家督は大公の弟の息子に継がせることが決まっていた。

 大公の弟は出来が悪く、何をしても上手くいかないような男で、夫人と離縁すべきだということばを大公ははねつけ、絶対に自分の意思を変えようとはせず、大公にその話を持ち出してはならないことも併せて周知の事実であった。

「娘って、けれど、大公は……」
「大公は婚儀を結ぶ前に、妾に子供を産ませている。そしてそれを知った夫人は、あてつけで婚儀を結ぶ前に使用人との子を孕んだんだ。しかし出産する意思はなく、子を流した。けれどそこで問題があり、二度と子供の孕めない身体となった。大公の醜聞が露見する可能性がある手前婚約を解消するわけにも当然いかず、醜聞を恐れたマルヴァータ家は二人を結婚させることにした。その時には、子供が産めないなんてことはまだ分からないままだったしね。そして娘は、子の望めない使用人の手で育てられ、何も知らず侍女の子として育ち、その背中を追うように今はマルヴァータ家に仕えている」

 シルウィンはアウラの話を聞いて、ふとあることを思い出した。それはマルヴァータ家で茶会に招かれた時のこと、シルウィンはどこか見覚えのある侍女を目にしていた。その見覚えは、大公に似ているからであったのだとシルウィンは思い直す。