シルウィンは月明りで本を照らし、双方国の地図が記された書物を見比べる。葡萄酒講座は最新のもので、王たちの記録はおよそ二百年前のもの。葡萄酒講座では各地の名産について紹介する場面でこの国の地図がのり、王たちの記録では戦乱について語られる場面で地図がのっている。
そしてさらに、マルヴァータで見た一点だけ花の色が異なる位置と照らし合わせた。
「……やっぱり……!」
古い地図ではきちんと記されている村が、新しいものでは削り取られ、地名も消されている。そしてその場所は、マルヴァータの色違いの花の位置と全く同じであった。浮かび上がった事実にシルウィンは確信する。アウラの村が消えたことにマルヴァータ家は何らかの形で関わり、そしてアウラはそれを調べるために、もしくは復讐をするために、あの庭園にいたのだと。
(こうして地図に干渉出来る力を持つのは、公爵家か王家くらいのものだわ。それに、アウラは幼いころ、川へ遊びに行った時、帰ってきたら突然家族や村の人間が消え、後から殺されていたと言っていた。村の人間をさらおうとするにも、やっぱり権力と財力は必要……)



