種類も、厚さも、何もかも異なる本。それらは全て入れ替え、題名の初めから文字と増やすようにとっていくと、「公爵に 未来なき 救いを求む」と、リグウォンへ救いを求める伝言へと変わっていく。
そしてシルウィンは図書館で定期的に返却と借りることを繰り返すことで、自身に万が一があり、書籍を返却できなければ図書館経由で、カーティスに知られずリグウォンへ自分の危機を知らせるよう準備をしていたのだった。
よって本を借りた時点で読まずとも本たちはシルウィンの目的を果たしていた。それは永劫変わらないはずであったが、アウラをマルヴァータ夫人の庭園で見かけたことで、シルウィンは『公爵による葡萄酒講座』と『救いを求む声に慈愛の手を差し伸べた王たちの記録』を見比べるように読み込んでいく。
『公爵による葡萄酒講座』『救いを求む声に慈悲の手を差し伸べた王たちの記録』は、ある名家の公爵が趣味である酒を勧めるものと、伯爵家の人間が自身の研究を発表したもの。いわば読まれるために記されたのではなく、完全に自分の満足のために出されたもの。
一般的に売りに出していないような、ただ本人が気まぐれに寄贈しただけの本だ。よってその二冊は、王立図書館の長い歴史の中で、シルウィンの手によってはじめて貸し出され、図書館を出たのだった。



