二人が眠る寝台にはバルコニーの格子の陰影が規則的に伸びている。しかしその規律を乱すようにシルウィンはそっと寝台を抜け出し、アウラが目覚めていないか確認すると、月明りを頼りに部屋の中央に置かれた机の前に立った。
その上には、以前シルウィンが図書館で借りた本が無造作に並べられている。シルウィンはそれらを吟味するように、題名を確認してから、二冊を手に取り、窓辺へと向かった。
今まで、シルウィンは借りてきたそれらに手をつけることはなかった。しかし手を付けない理由は、興味がないことや、シルウィンの読書に対する態度によるものではない。
そもそも借りてきた本は、シルウィンにとって読みたいから借りたものではなく、借りること自体に意味があり、読むことについては全く意味がなかったのであった。
『未来なき者たちの咆哮』『公爵による葡萄酒講座』『救いを求む声に慈愛の手を差し伸べた王たちの記録』



