シルウィンは静かに自分の腕に狙いを定めて、腕を切り付けると、ぴりりとした熱を腕が感じ、そこから血がさらさらとグラスに流れていく。彼女が赤く、深紅のような己の血を見ているとアウラは「慣れてきたね」と呟いた。
(……本当よ。初めての頃は人の血なんて不味いだろうと思っていたのに、アウラの血は甘くて、果実みたい。今では何よりも、美味しいと思うのよね……)
シルウィンは当初、アウラの血を飲むことに抵抗を感じていた。シルウィンにとって血の味とは、転んだ時に口からする鉄臭いものという印象が強かったからだ。しかし初めてアウラの血をシルウィンが口に含んだとき覚えた感情は、まさしく感動であった。シルウィンにとってアウラの血はどんな菓子より甘く、いつまででも飲んでいたい、甘美な毒に近いものだった。
「もう、それくらいでいいよ」
ぼんやりとした頭で目の前の光景を眺めていると、アウラに声をかけられシルウィンははっとした。自分の腕を押さえながらアウラに並々と血が注がれたグラスを渡すと、アウラはそれを飲み下していく。その様子すら、どこか浮世離れしている、とても見てはいけないような、それでいて美しい光景に思えて、シルウィンは静かに眺めていた。



