(……あれは、アウラで間違いない。ということは、マルヴァータ夫人に見つかってはいけないはずだわ)
シルウィンが突然声を上げたことにマルヴァータ夫人は戸惑いつつ、薔薇を見て頷き、その説明を始めた。シルウィンはその説明を聞きつつ、屋敷へ帰ったらアウラに今日のことを尋ねようと決め、血色が抜けたような色をして咲き誇る薔薇たちを見つめていた。
◇
「ねぇ、あなた今日マルヴァータの屋敷にいたでしょう」
シルウィンは、マルヴァータの屋敷から戻り、早々にアウラの部屋に帰ってきた。そして開口一番自身を出迎えたアウラにそう問いかける。
しかしアウラはシルウィンからその仮面を隠すように扉を閉じると、「なんのこと。俺はずっとここにいたけど」と言い放ちながらグラスを棚から取り出した。隠し棚からナイフを取り、それを自分の右手首にあてた。切り付け、グラスの中に己の血を落としていく。それは、シルウィンが吸血鬼になってから始めたアウラの日課であった。



