【完結】嘘つき騎士様と嫌われシンデレラ


 謝ったって、傷の記憶は消えない。失ったものは戻ってこない。謝罪は相手のためにあるのではなくて、あくまで自分の罪悪感を薄める、加害者のためのものだ。そうアウラは考え拳を握り締めた。やがて己の怒りを感知したらしいシルウィンが、眉をひそめるように自分を見ていることに気付く。

「どうしたのアウラ、口が曲がっているわよ」
「……え、シルウィン、俺の口が見えているの? 仮面は?」
「仮面はついたままだわ。あなたが吸血鬼だって言ってから、鼻から下が欠けたんだもの。だから今見えてるのは鼻から上を覆う仮面。子供の落書き付き……、って、ああ、大変! もう出る時間だわ!」

 シルウィンは時計を見て、焦ったように自身を鏡で確認していく。アウラはソファから立ち上がり、扉を開いた。

「では、下まで見送るわ、シルウィン様」
「ありがとうアウラ」