【完結】嘘つき騎士様と嫌われシンデレラ


「その儚げに、何本も針が犠牲になったけどね」

 アウラは煌めくパールに目をやりながら、シルウィンに顔を向ける。アウラの言う通り、シルウィンはこのドレスを作るにあたって、針を何本も犠牲にした。理由は何も技術に関わるものではなく、ただただ吸血鬼の力が原因だった。

 人間が吸血鬼に変化することは、何も人間の手によって死ななくなる、身体が丈夫になる、血を欲するだけではない。腕力だってそれなりに変化をする。

 しかし、元の血はやはり人間。死ななくなること、身体が丈夫になるなどの身体を保護する機能は普通の吸血鬼並みであるが、元人間の吸血鬼は並みの吸血鬼よりも腕力や速度は劣ってしまう。

 だがシルウィンは、元からリグウォンという力強き者が多く集うその血筋。その腕力に大きな変化が生じたのだ。よって普通に人間から吸血鬼に変わった場合よりもずっと力が強くなり、吸血鬼の中で腕力に自信がある者を遥かに超す力を手にしてしまっていた。にも関わらず突如手にした力、加減に慣れておらず結果的に誤って生地を切り裂いたり、針を折ってしまうことが多々あったのである。