しかしカーティスはその侍女の名前を覚えていない。シルウィン付きにした理由も、シルウィンと年が近いからと適当に命令した侍女だった。
(この女が、シルウィンを押さえなかったから……。あの女は、アウラの部屋に籠城するような真似をして……)
カーティスの苛立ちが、シルウィンに対してぶつけるはずだった苛立ちが、その方向を歪に変えていく。そして侍女の腕を掴むと、乱暴に酒のしまわれている木箱に押さえつけた。
「なぁ、なら酒の代りに慰めてくれよ。お前が……」
カーティスは、素早く侍女を組み敷いた。侍女は目を見開きながらも、抵抗する素振りはない。しかしカーティスがその服に手をかけ、「なぁ、シルウィン」と呼びかけた途端、暴れだした。
「違いますカーティス様、お気を確かに……! 私はシルウィン様ではありません! カーティス様っ!」
「暴れるなよアウラ、俺のことが好きなんだろ」
「違います、カーティス様っ、私はシルウィン様でもアウラ様でもありません」
「黙れよシルウィン、蛮族のくせに俺に逆らうな」
カーティスは、怒りをにじませた瞳で侍女に凄んでいく。そしてそのまま目の前の女をシルウィン、そしてアウラに見立て、心の中の苛立ちをすべて侍女へとぶつけていった。



