どうして、そのシーンだと知っているんだろう。 数あるシーンの中でどうしてそれだと。 「えっ、はい」 「あのシーンは、『俺の愛の深さを知るといいよ』ですよ」 「そうなんですね、ありがとうございます」 でも見逃したシーンを教えてくれる彼は優しいのかもしれない。 「いえ、ではまた」 「…ぁ、はい」 彼はそれだけ話すと颯爽と去っていった。 私はその後ろ姿をただ見つめつつ、 「相変わらず顔が整ってる人だなぁ」 そう思っていた。