願いはヒロに会う事のみ。しかし、それは叶わない。


出版社内にあるスタジオに入り、選ばれた衣装に着替え、ポーズを作る。


「あれ!るるちゃん。なんか、今日元気ない?」


ああ。


ヒロに会えない影響で落ち込んでいる自分を悟られるなんて、モデルとして失格だ。


もし、ヒロだったらもっと上手くやるはず。


たった1週間近く会えないだけなのに、落ち込んでしまうなんて、私は弱い。


でも、きっとこれはヒロが好きだから味わう辛さであって、幸せな事なんだ。


目を閉じて、深く深呼吸をすると、最高の笑顔を作る。


「いえ!元気ですよ!」
「あ、いつものるるちゃんだ!!」
「ですです!」
「じゃあ、撮ろっか!!」


笑顔を崩すな。そう自分に言い聞かせながら、ポーズを決めていく。


それが出来るのは、少しでも良い物を作り出したいからかも知れない。


なにより、ヒロとの未来が待っているから、私は頑張れる。
そう考えたら、自分が幸せに思えた。


「るるちゃん!今の笑顔凄く良い!!」
「ありがとうございます!」


きっとそれは、ヒロの事を考えて笑っているから、幸せそうに見えるのかも知れない。