「……暇だね」




放課後の図書室のカウンター。


藤沢くんと並んで座って、その微妙な距離感や図書室の静けさに緊張していたら、藤沢くんが口を開いた。




「あ……うん、人来ないね」




誰もいない図書室。窓の外から聞こえる運動部の声。カチ、カチ、と響く時計の秒針の音。少し喋っただけで思ったよりも声が響くから、また緊張してしまう。


慣れたようになんだか難しそうな本を持ってきて読み始めた藤沢くんにならって、私も本を探しに行って。結局置いてあった少女漫画を手に取って、カウンターまで戻ってきた。




本の中では、主人公とイケメンが甘酸っぱい青春を送っている。

図書室って漫画も置いているんだな、なんて思いながらページをめくる。





「……藤沢くん、なに読んでるの?」




どうしても気になって声を掛けたら、彼は視線をこちらに向ける。ぱちっと合ってしまった視線に、ドクンと心臓が鳴ったのがわかる。