「じゃあ女子の図書委員はじゃんけんで負けた三橋でいいなー?男子はどうする」




高校2年生の二学期が始まってすぐのホームルームの係決めで、図書委員になってしまった私。


図書委員は当番制で昼休みと放課後に図書室で本の貸し出しをしないといけないから、面倒だ。

友達とご飯食べる時間が無くなっちゃうじゃん、と不満に思いながらも、じゃんけんで負けてしまったんだから仕方ない。

自分が出したチョキを見て、ため息を吐く。





「じゃあ僕がやります」





綺麗にそろった指先。

上がった手の方向を見たら、同じクラスの藤沢くん。


声が大きくて何だか怖くて、男の子という感じのクラスの男子とはどこか違う。

「俺」じゃなくて「僕」って言うところとか。着崩さない制服とか。いつも難しそうな本を読んでいるところとか。女の子みたいに白くて綺麗な肌とか。人と話す時、ゆっくり丁寧に、優しい言葉で話してくれるところとか。だけど男の子たちと喋ってる時は、無邪気にわらってるところとか。




……それが何なのかわからないけれど、藤沢くんはどこか、他の男の子と違う。


だから藤沢くんが図書委員になってくれて、嬉しかったんだ。