浄化の力はアルボス帝国の少女にのみ宿り、新しく聖女候補が誕生すると現在の聖女は徐々に力を失っていく。稀に十年ほど空席になることがあるにせよ、おおよそ途切れることなく受け継がれていく。
シンシアの場合は前の聖女と十年ほど期間が空いている。そのため、これまでリアンから歴代聖女の話を聞かされてもピンとこなかった。
「いつも歴代聖女と比べるけど自動浄化作用で清潔だし、別に誰にも迷惑を掛けてないから良いじゃない」
たちまちリアンが片頬を引きつらせる。
「いやいや、掛けてるでしょう。私に迷惑掛けてること忘れないでくれますか? そして大人しくお風呂に入りましょう。何故ならあの薬湯には……」
リアンは聖女の世話人でもあるが薬師でもある。うんちくを傾けることは目に見えていたのでシンシアは慌てて話を遮った。
「わ、分かった分かった。リアンが私のことを想ってくれていることには感謝するし、迷惑を掛けていることは謝る。だけどやっぱりお風呂だけは……」
シンシアが尚も抵抗しようとすると、リアンが先ほどの厳しいものとは打って変わって優しい声色で畳みかける。



