眉を顰めるロッテはスカートをきつく握りしめると口を開いた。

「私のことを評価していると。イザーク様には……」
『えっ? ちょっと、口から出任せを喋らないで?』
「今、今はなんと言ったんだ? 頼むから同時通訳をしてくれ」

 懇願されたロッテは当惑した様子でイザークを窺う。伝えにくそうに僅かに言い淀んだが意を決して答えた。



「……く、口から臭いがするから喋らないで――と」
「待ってくれロッテ、ユフェはそんなことを言っているのか!?」
『一言もそんなこと言ってません!!』
「一言も言うな。つまり喋るな、と」

 会話が、彼女の通訳が怪しい方向へ向かってしまっている。


『私を嫌いなのは分かってる。でもお願いだから波風立てないで……』
「お願いだから風上に立たないで、と仰っています」

 そこまで酷いことは言っていない。
 完全に口臭が耐えられないから喋るな近づくなと言っているではないか。

 これはただの悪口であり、そして不敬ものである。
 シンシアは恐れ戦いた。