シンシアは冷や汗をかいた。今の申し出を伝えられるのは不味い。
 ロッテの行いがバレてしまえば、愛猫重症患者のイザークは激怒するだろう。腹の虫が治まらないと言ってその場で首を刎ねるかもしれない。

 内心焦っていると、ロッテはにっこりと微笑んだ。
「イザーク様の猫でとても幸せと仰っています」

 無論、ロッテは愚かではないのでシンシアが心配する必要は微塵もなかったようだ。彼女は如何にユフェがイザークを慕っているのかを伝えていく。

(そんなこと言った覚えはないわ)
 尻尾をぱたぱたと動かして耳を外に向けて低く伏せる。
 イザークは「それで?」と催促し、紫の瞳を爛々と輝かせた。よほどその言葉が嬉しかったのかしきりにシンシアにちらちらと視線を送る。

『ねえ、ロッテ。仕事の評価が大切なのは分かるけど、イザーク様に嘘を伝えるのは止めてくれるかな?』
 ロッテに詰め寄って少しだけ強めに申し出る。