シンシアは彼女が貴族の娘であると察した。他の世話をしてくれた侍女と違って、教会に定期的にやって来るやんごとなき身分の人たちと仕草や醸し出す雰囲気が似ているのだ。
 ただし、一点だけツッコミを入れるとすればそんなやんごとなき身分の彼女には似合わない、明らかに野生の小鳥が頭の上にちょこんと留まっていることだ。

 疑問符を浮かべていると、彼女は仕事中のイザークの元へ向かわずに真っ直ぐこちらへとやってきた。
「はじめましてユフェ様。本日よりあなた様付きの侍女になりましたシャルロッテです。私のことはロッテと呼んでくださいませ」

 ロッテはにっこり微笑むとスカートを摘まんで深々と一礼する。
 彼女の礼に習って小鳥も慇懃な礼をするのがまた可愛らしい。

 ただの猫にここまでの仰々しい挨拶をするのは、皇帝の猫でその飼い主が目の前で仕事をしているからだろうか。

(猫にまで皇族にするような態度を取るなんて……侍女も大変だわ)
 申し訳ない気持ちになって、思わず本音を口にする。

『私にそこまでの振る舞いしなくていいわ。普通に接して』
「あら、そんな風に思っていたのですね。気にしないでください」
『でも、フランクな言葉を使ってくれると気兼ねない関係になれそうだから。そっちの方が嬉し……は?』

 シンシアは目を見開いた。何が起きたのか分からなくて驚愕から混乱に変わる。