その言葉に、シンシアを撫でるイザークの手がぴたりと止まった。
「派遣されていた詩人が聖女だと? 詳しく話せ」
キーリはことの次第を詳しくイザークに説明した。
中央教会側が人手不足で聖女を神官と偽って派遣したこと。救護所が上級の魔物に襲われたこと。
さらに討伐部隊の隊長曰く上級の魔物が救護所に現れた時、前線で戦っていた討伐部隊では主流魔法が使えない状況にあったらしい。
主流魔法は精霊魔法同様、誰もが使える力ではない。そのため帝国騎士団に入るには魔力試験を受けなくてはいけない。
要するに魔力と剣の腕がなければ試験を受ける資格はなく、反面その二つが揃っていて適性があれば身分関係なく入ることができる。
主流魔法は精霊魔法とは違い、空気中に含まれる魔力を体内に取り込んで使用する。空気中の魔力濃度が薄い地域でなければいつでも使用が可能だ。
ネメトン付近は平生なら問題ない地域だが、当時全員が魔法を使うことができなかった。
「全員が使えなかったというのは大変不可解です。新種の魔物の仕業でしょうか? 腕が立つにせよ、主流魔法の使えない状況下での討伐は骨が折れたことでしょうね」



