「こんなにたくさんだとリアンの薬が足りないよ!!」

 自分は守護の結界を張っているので大丈夫だが、問題は帰る時だ。ネメトンの結界を一旦解いてヨハルたちの元へ戻るため、そうなると自分が通る時に狐の魔物の侵入を許してしまうかもしれない。
 ヨハルや護衛騎士がいるから問題ないのかもしれないが狐の魔物につられて他の魔物たちが寄ってきても困る。

 どうしようか悩んでいると、リーダー格の狐が一鳴きして一斉に飛びかかってきた。すると、すべての狐が横風を受けて吹き飛ばされてしまった。
 次に俊敏な黒い人影が動いたかと思うと、それは正確に剣で狐の急所を刺して仕留めていく。


(護衛騎士がここまで駆けつけてくれたの? でも彼は精霊魔法の守護が使えないからここまで辿り着けないはず)

 立ち竦んでいると、茂みをかき分ける音が聞こえてくる。
 鬱蒼とした木々の間から現れた黒い人影の正体――それはイザークだった。

「イザーク様? どうしてこちらに?」
「どうしてって、俺はシンシアを守るために最初から側にいたが?」
「ええっ!?」

 シンシアは目を見開いた。ネメトンに入る直前で感じたあの気配はどうやらイザークのものだったらしい。