(確かにこんなに大きいと一人で浄化仕切るのは難しい。でも改訂された鉄の掟が広まって定着すれば、次の聖女に受け継がれて同じように浄化してくれる)

 そうすれば漸くこの森にも安寧が訪れるだろう。
 シンシアはティルナ語を詠唱して大規模な浄化の魔法に取り掛かった。


 虹色の光の粒が現れはっきりとした組紐文様が魔王の核の真上に浮かび上がる。
 渦巻き状に動き始めた粒が泉の上の黒色の瘴気が一掃すると、次に魔王の核を包み込む。
 光の粒が次第に消えてなくなると、紫色だった魔王の核は少しだけ青みを帯びたような気がした。

(泉の水を重点的に浄化したから瘴気は暫く発生しないはず)

 淀みが消えた泉を見て、シンシアは目を細める。
 うーんと伸びをしてから振り返ると、いつの間にか狐の魔物が増えていた。


 浄化に集中していたので気にしていなかったが、どうやら先程の鳴き声は仲間に助けを呼ぶためのものだったらしい。数匹以上の狐の魔物がこちらの様子を窺いながらうろうろとしていた。中には中級以上のものも数匹いる。
 シンシアは数歩後退った。