パチパチと火の爆ぜる音がする。それから時折すすり泣く声も。
 シンシアはうっすらと目を開けた。

 炎が揺らめく暖炉の前で柔らかくて暖かなブランケットに包まれている。
 重たい頭を動かして辺りを見回すとユフェの部屋で、一人がけソファの上にいた。隣には床に座り込み、肘掛けに額をつけて涙を流すロッテの姿があった。

 頭の上にいる小鳥がシンシアが目覚めたことに気がついて鳴くと、ロッテが泣き腫らした顔を上げる。

「シンシア、シンシア! 目が覚めたのね。寒かったり痛かったりするところはない?」
 心配して顔を突き出すロッテにシンシアはどこも悪くないことを伝える。

『誰が助けてくれたの? 私、噴水で溺れたんだけど』
「私よ。小鳥さんが、シンシアのことを教えてくれたの」
 ロッテが視線を上に向けると、頭の上に乗る小鳥が「チィ」と鳴く。心配してくれているのか鳴き声は弱々しい。

『ロッテに知らせてくれてありがとう』
 言葉が伝わったらしく、小鳥がシンシアの側に移動すると首を傾げて短く囀る。
「早く元気になって欲しいって言っているわ」

 シンシアは尻尾を揺らしながら目を細めると小鳥に礼を言う。小鳥はその後も何度かシンシアの周りを跳びはねて元気づけるとロッテの頭の上に戻った。