「い、いやああああっ!! バケモノッ!!」


 瘴気は一定以上吸い込むと幻覚が見える。

 フレイアの目には歩み寄ってくる猫が恐ろしい化け物に映ったようだ。

『フレイア様落ち着いて。これは瘴気が見せている幻覚だから』

 シンシアが優しい声色で話しかけるがそれは却って火に油を注ぐ形となった。
 突然人間の言葉を喋る化け物などより恐ろしいに違いない。余計に取り乱す結果になってしまった。

(先に瘴気を浄化した方が良いみたいね)
 シンシアはティルナ語を詠唱して瘴気の浄化に取り掛かる。
 詠唱に集中していると、横目に怯えるフレイアが手を突き出しているのが映った。
(あっ……)

 彼女の魔法によってシンシアの身体は宙に浮いた。指の動きに合わせてシンシアの身体はぐるぐると円を描くようにして振り回される。

 平衡感覚がおかしくなって気持ちが悪くなった。しかし、シンシアの詠唱はまだ終わっていない。ここでやめてしまえばフレイアに攻撃されて浄化することがさらに難しくなってしまう。

(詠唱が終わるまであと少し!!)

 フレイアの魔法で今度は噴水よりも高い位置まで身体が上昇する。続いて魔法を解かれると身体が下に向かって落ちていく。