(ロッテはどうして狼狽えているの? ユフェは私で、私は猫なのに……)
ふと、いつもより視線が高く感じ、心なしかロッテが小さく感じる。
「……えっ?」
異変に気づいて視線を下に向けると、ボロボロの紺色のスカートから伸びた人間の脚が目に映る。
手を見れば体毛が一本もない白い陶器のような滑らかな人の手――元の姿である人間に戻っている。
声を失って茫然自失になっていたシンシアは状況を飲み込むと我に返って叫んだ。
「私、人間に戻ったの!?」
人間の言葉が話せるようになったばかりか、まさか解呪なしで元の姿に戻れてしまった。やはりあのネズミみたいな魔物は残りの魔力を充分に発揮できず、中途半端に呪いを掛けてしまったらしい。
混乱しているロッテは口を半開きにしてこちらを凝視している。ただ、顔にはしっかりとあなたは誰? という疑問文が書かれていた。
「欺していてごめんなさい。私は猫でも妖精猫でもないの。もともとは人間で、中央教会の人間。魔物に呪いを掛けられて猫にされていたの」
バスタブから出て腰を折るシンシアはこれまでのことを包み隠さずに話した。