「……っ!?」


 鏡越しで目の当たりにした行為にシンシアは目を見張る。
 口づけされたところが熱くなり、さらにその熱は身体全体へと広がっていく。
 心臓がいつもより激しくて煩く、それと同時に心の底から焦がれるような感情と喜びの感情が沸き起こり綯い交ぜになる。

 ――また、自分の体調が悪くなっているようだ。


 シンシアは心臓の鼓動を感じながら、健康的な生活を心掛けようと何度も自分に言い聞かせたのだった。






 執務室での出来事から数日後。
 シンシアはロッテと暖かな日差しの下で中庭を散歩していた。
 あの日以降、ロッテは毎日献身的に世話をしてくれる。イザークと同じくらい甘やかしてくるところが少々困るが、前よりも打ち解けてとても仲良くなった。

「――それで、ランドゴル伯爵との間にあった誤解は解けたの?」
 隣で歩幅を合わせてくれるロッテに尋ねると、彼女は気恥ずかしそうに頬を掻く。