それに今そのタイトルを言ってしまったせいか、それ以外の名前が何も出てこなくなった。
ニゲラというのは夢の中で出逢う恋の歌。
夢の中の男の子が女の子の背中を押す応援ソングでもあるんだ。
それで女の子は切ないけど心温まる恋をするの。
儚いけど、こういう素敵な恋をしてみたいと強く思えた歌でもあって、カラオケで絶対に歌う曲。
「ニゲラ?」
「うん、好きな曲でね……ネーミングセンスないのはわかってるんだけど、それ以外思い浮かばないんだよね」
自嘲気味になりながらも笑いを含ませると、ユキはドラゴンと目線を合わせた。
そして花のように笑うユキに思わず息を呑む。
「それでいいんじゃないか。俺は気に入ったぞ」
顔はドラゴンのままで、声はわたしに向ける。
「良かったな、ニゲラ。ヒナノが良い名前をつけてくれたぞ」
「……っ」
ドラゴン──ニゲラに向けて微笑むユキがカッコよすぎる。
ユキがそう言ってくれたから、わたしもニゲラという名前がとても素敵な名前に思えた。



