おかしなところはトラオムで一回も寝ていないのだ。

なのに眠りから覚めるように、長い間閉じてた瞳を開くかのような……何が言いたいかというと、


どうやってベッドで寝て目が覚めたんだ……?

いつ寝たんだ、わたしは。


「あ〜っ、もうわかんない!」


わたしは脳みそが空っぽとか脳筋とか言われる系の常識がある馬鹿の部類に入る。

だから、何が起きたか当の本人であるわたしですら理解できるわけがなかった。


もう二度とあそこに行きたくない。

もうあんな怖い経験はしたくない。


全然よくわからないけど、それだけは強く思う。


「雛乃おかしいって。何抱えてんのよ。どうせ大したことじゃないんだから私に話してすっきりするか、きれいさっぱり忘れなさいよ」


柚子はなんだかんだで面倒見がいいから、一緒にいるのをやめられないんだ。

でも、柚子の言う通りかも。


どうでも良くないことだけど、忘れた方がいい。

何も理解できなくてもどかしいけど、一夜限りの心霊体験的な感覚で結論づけたら大丈夫でしょ。

夢ということにして、きれいさっぱり忘れよう。