人間じゃないのは俺だけじゃなくて、こいつもだ。
こいつの人間じゃないところを引き継いで、俺も人間じゃなくなったのかもな。
だけど、これで全てを終わらせよう。
それでこの苦しみから解放されよう。
躊躇うことなくその刃を振り下ろそうとしたその時。
「お兄ちゃん!」
トラオムを作った最強の魔法使いが最も恐れた
──弱点が現れてしまった。
「エレレセッド!」
──助けて。
雛乃が来て、己の汚れた欲を曝け出せなくなってしまった。
行き当たりのないこの想いを……ナイフに込めた殺意をどこに突き刺せばいい?
雛乃がいる前で、人なんか殺せない。



