俺は騎士団長となったザラームと一緒に行動することが増えた。
ザラームはアランを奴隷から解放した時に、彼女に闇の保護魔法をかけた人だ。
そして俺と血の繋がる数少ない存在。
「……ふっ」
「ジン様、幸せそうですね」
「ああ、アラン達が笑っている」
アランはユキとユラハと一緒に過ごすようになって、俺はこんな風に笑うんだなと胸が満たされた。
──そんな時だった。
雛乃がこの世界にやってきたのは。
あの父親を殺したいと思うになって、トラオムが生まれて2年が過ぎた時のことだった。
俺は雛乃が大好きで、雛乃のわがままに弱いのは自分でも自覚していた。
もし俺があの人を殺したい……トラオムや俺の本当の姿を知ったら、雛乃は俺を止めるんだろう。
だって雛乃は誰よりも純粋で優しい人なんだから。
そんなことを言われたら、従ってしまう自信しかなかった。



