お母さんとお父さんとその女性は幼なじみで、古くからの友人らしい。
お母さんとお父さんも子どもが欲しいけどできないと悩んでいたため、幼なじみ達の意思が固まった。
3人で俺を育てる、と。
そして俺が産まれた。
その後、俺に兄弟を作ってやりたいと諦めずに不妊治療をし続けたお母さんは無事に妊娠して雛乃を産んだのだ。
「私があの人の子どもを育ててるって知ったら、きっと怒り狂って何をするかわからない。あの人は元々精神が不安定だったから、怖くなって……迅を育ててほしいとあなたの両親に頼んだの。そうしたら迅に被害が出ないと思ったから」
もしもその女性があの人から逃げてこなかったら、
もしも俺を守ってくれなかったら、
もしも両親が断っていたら、
もしも全てがうまくいかなかったら、
俺は産まれていなかったのかもしれない。
そう思うと、とても恐ろしくなった。
「でも迅のことを知りたくて、時折今みたいに家に遊びに行っては迅と雛乃ちゃんの様子を聞いていたの」
ごめんなさい、と謝る姿はとてもしなやかで美しくて。
俺を産んでくれてありがとうという感謝の気持ちを芽生えさせた。



