あの夢の続きをもう1度描けたら


***


走り抜けて、たどり着いたのは慣れない場所だった。

知らない場所なので土地勘はアテにならない。


わたしはこのあとはどうしようと思い詰めると、どこかから悲鳴が聞こえた。

それで大まかな方向が定まったわたしはまた呪文を唱えて、その場所へと移動した。



今度はとあるマンションの一室の前に立った。

そして悲鳴も次はダイレクトに響いてきた。


「おい……っ、やめてくれっ!」

「黙れ!! 犯した罪はなくならないんだぞ!」


この声……お兄ちゃんだ!

部屋の中から聞こえた怒鳴り声に確信したわたしは、ドアノブをひねる。

鍵がかかってないと気づくと、すぐに扉を開けてなりふり構わずお兄ちゃんの元へ駆けつけた。


「……っ」


部屋の奥へと進むとお兄ちゃんがとある男性に包丁を向けて脅迫していた。


まだふたりは生きている。

お兄ちゃんの“本当のお父さん”もまだ傷ひとつついていない。