奴隷になってからは、人の優しさだとか温かさに触れられることなどありませんでした。
だからすぐには気づけませんでした。
これが嬉しいのだと、優しくされるのはこんなにも嬉しいものなのだと。
嬉しいなんて感情、いつぶりでしょうか。
ユラハ様の気持ちは嬉しいですけど……
「申し訳、ありません……私は、動けません……」
私に翼がなくて、飛び立つ場所などありません。
主様が作らせてくれないのです。
私の身体は全て主様のものなんだと、あの日あの時身をもって知ってしまったのですから。
主様がこの世にいる限り、私は主様のそばにいなくてはなりません。
「アランという名は主様のために在るのです」
もし私に母親の記憶がなかったら、奴隷であることに誇りに思えるのでしょう。
ですが、私は物心ついた後に奴隷になりました。
その言葉は嘘偽りに溢れていました。



