花がとても綺麗で、思わず見入ります。
「ユキ。彼女を連れて行こう」
その花を何本か摘んで、何かを言うかと思えば突拍子もないことでした。
前髪を真ん中で分けた男はユラハと名乗りました。
もうひとりの方はさっきユラハ様がユキと呼んでいたので、ユキという方なのでしょう。
優しそうな雰囲気のユラハ様とは正反対のユキ様。
今だって無愛想なまま、ユラハ様を見つめています。
悪い人ではなさそうだけど、主様を思い出させるから恐怖に苛まれます。
「俺はいいけど……そいつ」
ユキ様は気まずそうに私を見つめます。
きっと足枷と手枷を見て奴隷だと判断したのでしょう。
奴隷を許可なく連れ出すのは立派な犯罪です。闇の魔法使いが独自に制定しました。
「知ってる。でもこんな傷だらけなのに何もしないでおくのは嫌だよ」
「……っ」
ユラハ様が悲しい顔をしたのは、私を心配してくれたからなのだと。



