主様の機嫌が悪いのでしょう。
最近、頻繁に殴られます。
「お前、大丈夫か?」
「痛そうだね……」
そんな私にふたりの男が現れたのです。
──それが、ユラハとユキだった。懐かしい記憶だ。
「だいじょ……」
返事をしようとしたけど、痛みでお腹を押さえつけます。
その様子を見てふたりは顔を悲しそうにしかめました。
「なんで悲しそうにするんですか」
なんとか振り絞って声にしますが、彼らはもっと悲痛な表情をしたものですから理解できませんでした。
「フロース・ボワーレ」
すると少し長めの前髪を真ん中で分けた男が地面に呪文を唱えて、花を咲かせました。
赤や黄色、オレンジ……温かい色がたくさんあります。
どれも私には縁のない色達でした。



