「王からの指令でヒナノ様を追放するよう言われましたが、チャンスを与えましょう」
わたしは騎士の顔を初めて見た。
クリクリした可愛らしいチョコレート色の大きな瞳で男性にしては可愛らしい容貌だが、体格が鍛えられたものだった。
彼は続けて口を開いた。
「もしそのチャンスを無駄にした場合、王の命令通りあなたを捕まえ、追放いたします」
「どうして……っ、わたしは何かしたんですか!?」
わたしは何もしてない。
ここにいる人全員が被害者だ。
「たしかにあなたは何もしていません。ですが、トラオムでは王が絶対的権力を持っているのです」
王がこんな一方的でいいのか。
一体、何をしたらこんな王が生まれるのだ。
感情がぐちゃぐちゃに混ざり合って、言葉に表せない。
憎しみ、苦しみ、悲しみ、寂しさ。
今のわたしの感情はどれが近いのだろう。



