欲を出さなければ中途半端な幸福くらいは手に入るかもしれない。
どうせ朱里以外の人間と結ばれるつもりがないのなら、いい加減ケリをつけるべきだ。
全てを失うよりその方がマシという考えもできる。

だから俺は近々両親にありのままを説明することを朱里に提案した。
反対されるのは百も承知の上での決意ではあったが、絶望と背中合わせの希望に賭けて、報われた未来をそこに見出したかったのかもしれない。

もし両親が反対のあまり俺達を強制的に引き離そうとするものならば、大人げないが最悪駆け落ちで逃避行でもしてやる。
完全なハッピーエンドなんて、道徳に背いて人生を歩むと決めた俺には最早無縁の言葉になりつつあるのだから。