しかし今俺が彷徨っているのは、出口の見当たらない迷路だ。
入口の場所などとっくの昔に見失ってしまった。
そのうち、どう足掻いても捻じ曲げることのできない制約が全身に纏わりついて、身動きできなくなってしまうんじゃないだろうか。
俺はそれが怖くて堪らない。
ただ恐怖に怯えることしかできない意気地なしな自分に嫌気がさす。


「それじゃ今日はそろそろ帰るね」
「泊っていかないのか?」
「うん。明日は友達と約束あるから」
「そうか。気を付けてな」


その日、俺は朱里が帰ってから一晩中思案した。
ロクな睡眠もとらずにひたすら煩悶を重ねた。

そして朝日が昇りかけてきた頃、ようやく結論に行き着いた俺は度胸を据えることを決めたのだ。