「……あ……か、り……」


いつしか最愛の妹がプレゼントしてくれた手編みのマフラーを、引き出しの中から取り出す。
茫然自失としながらも、覚束ない動作で調べた方法を今から試みようと思う。

幸運なことに、以前運動不足を解消するために買っておいたぶら下がり健康器もある。
まさかこんなことに役立てる日がくるなんて。
もしかしたら俺はこうなることを分かっていたのかもしれない、というのはこじ付けすぎるか。

遠い昔お前が込めてくれた温もりを首元に感じながら、俺が次第に体温を失ったことを知った時、朱里は涙を流してくれるのだろうか。
俺がそれを知ることは一生無い……いや、その一生がもうじき終わりを告げようとしているのだから当然なのだが。


「さようなら、朱里」


願わくば生まれ変わったお前と、今度は兄妹ではない形で家族になりたい。
次の瞬間、俺は足場を失っていた。



【引き千切られた愛の行方 END】