【完結】吸血侯爵と没落メイドの囚われ初恋契約


 グレンの隣に立っていたルネリアは、グレンの口から人の名前が出たことに僅かに驚いた。今まで、グレンはルネリアに対して人の名前を出したことは一度もなかった。

 そもそもグレンはルネリアに対して、自分の仕事の話を一切したことがない。あの麻袋の正体が何なのかも、ルネリアはグレンに聞いていない。あの日血をぬぐった後、グレンはしばらく蔵にいるから何かあればノックをしろと言って、日が沈むまで蔵から出てくることはなかった。

 その後のグレンの表情が深刻そうで、ルネリアは理由を聞きたい反面、グレンがそれを問いかけないで欲しいということも感じ取り、ずっと黙っていた。

 そして今、グレンの知人か、それ以上か、グレンと何かしら関係のある人物が現れたことに、ルネリアは大きく見開いた。その視線を感じ取ってか、キャロラインがルネリアのほうへとヒールの音を立てながら歩み寄っていく。

「わたくし、キャロラインと申しますの。グレン様とは幼馴染で……今はお仕事が一緒で。あなたの名前は?」
「ルネリアと申します。グレン様の侍女として仕えております」

 そう言ってルネリアは頭を下げる。するとキャロラインはくすくすと笑った。

「あら、そうなの? 貴女が……」

 キャロラインが、ルネリアを値踏みするように上から下と眺める。ルネリアがキャロラインの視線に落ち着かない気持ちでいると、キャロラインは首を傾げた。