「何だ」
「……ドレス、それと、髪飾り……ありがとうございます。こんな素敵なドレス……着るの初めてで、私なんかには勿体ないくらいで……」
ルネリアはそう言いながら、自身の髪につけた髪飾りにそっと触れた。
髪飾りは、細かな花と蝶が繊細な糸で仕上げられているかのような金細工で、蝶の羽の模様一つ一つに色の異なる鉱石が散りばめられている。そしてルネリアの着ているドレスは、生地が重なって、海の波のように裾が揺蕩い、腰から足元にかけて色合いが徐々に変わっているデザインだ。靴はドレスと髪飾りに合わせたもので、歩くたびに足元で花を模した飾りが輝く。
ルネリアは、今までこんな風に着飾ったことはない。今まで服はどれも次々と装飾品やドレスを欲しがる姉にお金がかけられ、ルネリアにはドレスが与えられることも、装飾品が与えられることも殆どなかった。
元々男爵家という立場上、公爵家の令嬢のように毎シーズン何着もドレスを新しく仕立てる必要性はない。しかしルネリアの姉マリアは、公爵家の令嬢たちに馬鹿にされて悔しいと両親に泣きつき、そのたびに両親はマリアにドレスや装飾品を買い与え、時折ルネリアの使い古したドレスを仕立て直す予定を先送りにしてマリアの新しいドレスを仕立てることもあった。
そういう事情があったこと、ルネリア自身自分を着飾ることに興味を持てなかったこと、マリアや継母に「醜い」と罵られていたことで、着飾ることは自分とは無縁だと考えていた。



