賑わう人々と、町並みをルネリアはやや圧倒されながら見つめた。彼女はメアロード領に訪れ、グレンの城へと向かう時に街を通過はしたものの。本当にただ通り過ぎただけであった。それも地図を見ながら周りの建物と照らし合わせながら、そしてこれから新しい仕事場に向かうという緊張で、街自体を見ることはなかったびだ。
しかし今は仕事といえど、当時よりルネリアは心持ちが軽く、そしてグレンについての印象も当初より変わっていることで、街を見る余裕が生まれていた。
そんなルネリアの様子を、グレンが嬉しさを何重にも隠した瞳で見つめる。やがてルネリアはその視線に気づき、改めるように背筋をぴんと伸ばした。
「すみません。その、ここに初めて訪れたときは、迷わないようにと、あまり町並みを見ていなかったもので」
「別にいい。今日はお前を案内する意味合いもある。私の所用は些細なものに過ぎない。使用人といえど仕える主の行く場所は、しっかりと理解しておく必要があるからな」
実際、ルネリアの為であって、用なんてものはないしな。心の中でそう呟きながら、グレンはルネリアを見る。ルネリアは「あの……」と頬を染めながら口を開いた。



