ルネリアは、鏡に背を向けて、懸命に手を伸ばす。しかし留め具は背中についていて、途中までしか留めることが出来ない。ドレスはもともと侍女が着せることを想定して作られるものであり、侍女が一人で着るものではない。にも関わらずルネリアは部屋のあらゆるものを使って、何とか自分一人で留めようと奮闘していた。
「どうしよう」
ルネリアが、鏡越しに自身の背中を見ながら呟く。すると一拍も置かない間に部屋の扉がノックされた。ルネリアはどうすべきか悩んだ結果、グレンから受け取ったボレロを着込み、前を重ね合わせるようにして押さえながら、扉を開く。
「何かあっ……、ん?」
グレンはルネリアの異変に直ちに気づく。普段、ルネリアは真っすぐぴんとした姿勢で立っており、背を丸めた立ち方はしない。グレンはルネリアのつま先から頭の先までじっくりと眺めると「風邪か? どこか痛いのか?」と不安げな目を向けた。その視線にルネリアは弱々しく首を横に振る。



