【完結】吸血侯爵と没落メイドの囚われ初恋契約


「一度、街を案内して差し上げたら?」
「しかし……」
「王都ならまだしも、メアロード領の街なら危険なんて殆どないわよ。世界で一番お強いのはグレン様、でしょ?」

 ぴたりと、キャロラインはグレンの胸へとぴったりと手を這わせる。そしてキャロラインとグレンの様子を物陰から伺っていた令嬢たちをちらりと盗み見ると、意地悪そうに笑う。

「ねえ、グレン様、一度侍女の方を案内して差し上げたほうがいいと思いますの。ほら……城から出られないことを苦に、ねえ? 魂を解放して城から出る本懐を遂げることになってしまったら……ねぇ」

 キャロラインが、グレンをうっとりした目で見上げる。グレンはただ地面に目を伏せながら、キャロラインの言った最悪な想像を頭の中で描き出していた。



 グレンがキャロラインの言葉によって悩まされた日の晩、ルネリアは自身の部屋にて、日記を書いていた。その日記は、赤い皮地が表紙になっていて、ルネリアがメアロードの城に訪れてから、日々の仕事についての覚え書き、グレンとの会話や、温室についてなど、職務日誌、日記、観察日記、全ての内容が混ざったルネリアの日記であった。