廃太子エーベルとマリアにルネリアを攫わせるよう唆し、呪具を使わせ、ルネリアを襲うように仕向けようと。
そうしてグレンにルネリアを救わせ、その過程で呪具が破壊されれば、あくまで元王族の人間が私的な理由で呪具を持ち出し、吸血鬼に害をなそうとしたという構図が出来上がる。宰相にとって、素晴らしいシナリオであった。
そして宰相はキャロラインを呼びつけ、マリアの部屋に向かわせ唆すよう命じ、女に弱そうな、そして以前呪具を管理していた兵士にも変装させ、エーベルとマリアの部屋に食事を運ばせる係になるよう速やかに手配した。
そしてキャロラインにグレンとルネリアをメアロードの街、そして人間が入り乱れ、気配の察知が難しい劇場へとおびき出し、攫わせたのである。
しかしここで三つ、想定外のことが起こった。まず一つは攫われたルネリアをグレンが驚異の速度で探し出したことだ。呪具で気配を消し、そこからルネリアを辿ることは不可能なはずなのに、グレンは匂いを嗅ぎ分け、メアロードから遥か遠くに位置するこの国の王城へと飛ぶような速度で移動したのである。



